「サーモン」と「鮭(さけ)」はどちらもサケ科の魚で、食材として家庭の食卓に頻繁に登場します。外見上は色の違いはあるものの、両者の見た目には大きな差はありません。それにもかかわらず、なぜこの魚には異なる名称があり、料理によって使い分けられるのでしょうか?
今回は、「サーモン」と「鮭(さけ)」の間に存在する具体的な違いについてポイントを押さえてわかりやすく解説したいと思います。
チコちゃんが「サーモン」と「鮭」の違いを紹介
2021年1月22日放送のNHK人気番組『チコちゃんに叱られる!!』の中で取り上げられた「スーパーで売ってる鮭とサーモンの違い」が注目されました。一般的には、カタカナで「サーモン」と表記されることが多いため、輸入されたものがサーモン、国産が鮭と誤解されることが多いそうです。
番組でのチコちゃんの解答によれば、「生で食べられるものがサーモン、生で食べられないのが鮭」という区別があるとか。
詳しくみていきましょう。
「サーモン」と「鮭」の違い
英語では鮭も「salmon(サーモン)」と呼ばれ、基本的には同じ魚を指しますが、食材としての扱い方で「鮭」と「サーモン」の名称が異なります。
「鮭」という名称は通常、天然のものや加熱して食べるものに用いられます。
一方、「サーモン」は養殖されたものや生で食べられるものを指します。
例えば、寿司屋では生で食べるにぎりは「サーモン」と呼び、炙ったものは「鮭」とされます。
このような呼び分けは、寄生虫アニサキスの存在に関連しています。
天然の鮭にはアニサキスが寄生している場合があり、これを摂取すると食中毒を引き起こす可能性があります。これにより腹痛や嘔吐などの症状が現れることがあります。アニサキスは適切な加熱処理で死滅するため、天然の鮭は加熱して食べる必要があります。鮭がアニサキスに感染するのは、彼らが捕食するオキアミが原因です。
一方、養殖のサーモンは人工飼料を食べるため、アニサキスの感染リスクが低く、生で食べられます。
養殖の鮭が「サーモン」として認識されるようになったのは1986年のことです。ノルウェーでは1970年代から養殖が始まり、この技術が日本に伝わりました。生で食べられる養殖の鮭は、「鮭」という名前だと受け入れられにくいと考えられ、天然のものと区別するため「サーモン」という名前で市場に出されました。この名前が定着し、天然で加熱が必要なものは「鮭」、生で食べられる養殖のものは「サーモン」として区別されるようになりました。
「鮭」と「サーモン」を区別するのは日本独自の文化
日本での「鮭」と「サーモン」の区別は、日本特有のルールに基づいています。法的な規定はありませんが、国際的にはこのような区分けはありません。
この分類の始まりは、ノルウェーの鮭養殖業者が日本の寿司や刺身文化に着目し、その製品を日本市場に導入したことにあります。
彼らは、天然鮭と養殖鮭の違いを明確にするために、「サーモン」という名称を使用しました。これが広く受け入れられ、現在の名称の違いにつながっています。
鮭を購入する際は、生食用か否かを名前や表示をちゃんと確認してから選ぶことが重要です。
「サーモン」とは?
通常、サーモンは淡水で育つ魚で、主に養殖され、生食に適しています。
サーモンには様々な種類があり、それぞれ独自の特徴を持っています。公式に「サーモン」と呼ばれるのは、サケ科サケ属に属する淡水魚「トラウトサーモン」です。
しかし、日本で広く消費される「アトランティックサーモン」は、本来海水魚です。一般的には海水魚を鮭と分類することから見ると、ここには矛盾が存在します。しかしながら、日本で食されるアトランティックサーモンのほとんどは養殖されたものであるため、サーモンとして扱われています。日本でサーモンと鮭を区分する際は、「養殖か天然か」という基準が重要です。
また、「ノルウェーサーモン」という名前もよく耳にすると思います。これは、アトランティックサーモンの一種で、ノルウェーで厳しい基準のもと養殖されたものを指します。
サーモンは養殖されるため、飼料の管理が徹底されていて、これが生食に適している理由の一つです。
「鮭」とは?
鮭は通常、海水で生息する魚であり、天然のものが多いとされています。食べる際には加熱調理が必要とされています。
鮭の分類では、天然の海水魚であることが一つの基準になっています。日本では特に「白鮭」という種類が知られており、これも海水魚の一種です。
天然の海水魚である鮭は、「オキアミ」と呼ばれるプランクトンを食べています。このプランクトンにはアニサキスという寄生虫が含まれることがあり、その結果、鮭に寄生する可能性があるため、生食には不向きです。一般的には、鮭は加熱して食べることが推奨されています。