「的を射る」と「的を得る」の言い方はどちらでもよい?

私達が日常生活の中で使っている言葉の中には、本来の意味や書き方使い方などを勘違いしている、間違って覚えてしまっているものがたくさんあります。

間違ったまま気づかないでいると、まわりの人に「常識のない人」「残念な人」などと思われてしまうかもしれません。子どもなら許されるかもしれませんが、たとえ若くても社会人になっていればもちろんのこと、中高年なればさらに恥ずかしい思いをすることになりかねません。

あなたも使っていませんか?

「私は大丈夫!」と思わず、今一度確認してみて下さい。これまで会話の中で当たり前に使ってきた言葉の中にも、勘違いが見つかるかもしれませんよ。

今回は、一見どちらの使い方でも問題ないように思える「的を得る」と「的を射る」について、日本語として正しく使えるのはどちらなのか?わかりやすく解説していきます

「要点を的確にとらえる」場合のことわざは、「的を射る」と「的を得る」の言い方はどっちが日本語として正しいの?

はて?どちらも聞いたことがあるような?

どちらを使ったらいいのか,両方正しいのか、迷ったとら今回の説明を思い出してくださいね。

「的を得る」と「的を射る」という日本語ですが、本来の意味には少し違いがあり、勘違いして間違って使われやすい言葉です。

では、慣用句「的を得る」と「的を射る」について正しい理解を深めていきましょう。

 

「的を得る」は新語!!

「的を射る」は、要点を正確に捉えることを示す表現ですが、長い間「的を得る」という言葉はこれの誤用だとされていました。

国語学者の吉海直人氏の指摘によると、『三省堂国語辞典』の1982年の第三版が初めて「的を得る」を「的を射る」の誤用として記載しました。しかし、2013年の第七版ではこの誤用の記載が削除され、「的を得る」が正しい用法として掲載されるようになりました。

2012年の文化庁の『国語に関する世論調査』によると、全年代を通じて「的を射る」を使う人の方が「的を得る」を使う人より多いことが判明しました。ただし、30代では「的を射る」が48.8%、「的を得る」が46.0%とほぼ同じ割合で使用されていました。

このような背景から、「的を得る」は「的を射る」の単なる誤用ではなく、派生した新語と捉えることが可能であるという見解が近年では広まっています。

ただし、できる大人はやはり「的を射る」を使ったほうがよさそうです。

「的を射る(いる)」と「的を得る(える)」の違い

「的を射る」の意味

「的を射る」という表現に関して、広辞苑ではこの言葉を「物事の肝心な点を正確に捉えること」と定義しています。一般的な使い方としては、「的を射たコメント」や「的を射た見解」といった形で、「的を射た○○」の形で頻繁に使用されます。

「的を得る」の意味

「的を得る」という表現の意味は、広辞苑には記載されていないものの、一般的に口語でもちいられ、その意味は「まさに要点を捉える」というニュアンスで使われることが多いです。

慣用句「的を射る」の由来は

「的を射るという表現の「的」は、もともと弓矢や銃の射撃練習の際に用いる標的を指す言葉でした。この表現は当初、弓の矢や銃の弾丸が目標に正確に命中することを意味していました。しかし、現代ではこの意味が変化し、物事の要点を巧みに捉えることを意味するようになっています。

違いとは?

「的を得る」と『的を射る』には明確な意味の違いは存在しないものの、一般的に「的を得る」は口語で、一方の「的を射る」は書き言葉でよく使われます。

日常の会話ではどちらの表現を用いても特に問題はありませんが、ビジネスの場やフォーマルな状況では、幅広い年齢層に親しまれている「的を射る」の使用がより適切です。

「的を得る」は使用時に注意!

かつて「的を得る」は、「的を射る」の誤用とされていました。ただし、「得る」という動詞には理解や捉えるという意味も含まれているため、この表現が完全に間違いであるとは言い切れなくなっています。

さらに、「得る」という言葉の発音が「射る」よりもしやすいことも、「的を得る」が誤用ではないとされるようになった理由の一つです。

しかし、「的を得る」という表現は一部の辞書にしか掲載されておらず、広く認められている表現ではないため、公式のスピーチやメディアなどの公的な場面では使用を避けるべきです。日常生活での使用に問題はありません。

「的を射る」「的を得る」の使い方

「的を射る」という表現では、「的」は「目標や重要な点」を、「射る」は「重要なポイントを正確に捉える」という意味を持ちます。したがって、このフレーズは「目標や重要な点を正確に捉える」という意味で使用するのが適切です。

この表現は、会議で誰かの発言に賛成する際、質問や指摘が核心を突いていると言いたいとき、あるいは提案やプロジェクトに対する見解を表明する際などに用いられます。

【使い方の例】

  • 部長のアドバイスは常にポイントをついて的を射ている
  • 彼女の鋭い的を射たコメントに、周囲の人々は皆納得した
  • 質問応答の際、要点を捉えた的を射た質問をすることが重要です
  • 内容が核心を突いてた的を射たもので、相手も間違いなく感心するでしょう。
  • この前のプレゼン資料は的を射ている箇所も多いが、精度をもう少し上げる必要がある

類義語や言い換え表現

言葉の知識を拡大するためには、同義語や英語の表現を一緒に学習することが効果的です。以下、類語や言い換え表現です。

・当を得る(とうをえる)

「当を得る」とは、ポイントを正確に捉えることや、理にかなうことを指す表現です。「当(とう)」という言葉は、もともと理論や原理に合致することを示します。

「当を得る」と「的を射る」は意味が似ており、加えて「当を得る」に「得る」という動詞が含まれているため、これらが混同されて「的を得る」という言い方が生じた可能性がある、という見解も存在します。

・正鵠を得る(せいこくをえる)

「正鵠を得る」という表現は、事の核心や重要なポイントを的確に指摘することを意味します。「正鵠」は元々中国の言葉で、「標的の中心」という意味を持っていて、時を経て「物事の重要部分や核心」といった意味で使われるようになりました。

・核心をつく(かくしんをつく)

「核心をつく」ということわざは、「事の中心やもっとも重要なポイントを鋭敏に指摘する」という意味を持ちます。特に、人が敏感に反応する事柄や問題点を指摘する際によく使われます。

人の弱点や問題点を指摘することが必ずしも良い印象を与えるわけではありませんが、真実や事の本質を明確にするという点で、核心をつく能力は価値があると言えます。実際、本質を理解し伝えることができる人は、議論や会話の流れを効果的に進め、盛り上げることができます。このため、芸能界でも、核心をつくような発言をするタレントは高く評価され、成功しています。

・看破する(かんぱする)

「看破する」という表現は、「真実や背景を見抜くこと、事の本質を理解すること」という意味を持っています。

・「的を射る」は英語では

日本語の「的を射る」を英語でどう表現するかについて以下、説明します。

「的を射る」を英語で言うと「hit the nail on the head」となります。この直訳は「頭の上で釘を打つ」ですが、実際の意味はもう少し複雑です。

この英語版の慣用句は、「hit the nail」と「on the head」の二部分に分解して理解できます。それぞれの部分は以下の意味を持っています。

  • 「hit the nail」: 釘を打つ行為
  • 「on the head」: 釘の平らな部分

このため、「釘の平らな部分に正確にハンマーを当てることで、釘がうまく打てる」という比喩から、「ポイントを正確に捉える」や「核心をつく」という意味につながります。

さらに、「hit the nail on the head」には、同じ意味の言い換え表現もあります。例えば:

  • 「That’s right!」(その通り!)
  • 「Exactly!」(正確に!/その通り!)

まとめ

「的を射る」と「的を得る」両方の表現は「事の重要な点を確実に捉える」という意味で理解され、「的を得る」は単なる誤用というわけではなく、新たな表現とみなす見方も存在します。しかし、「的を射る」の方が公式の場やビジネスシーンでよく使われます。

同様の表現や英語での言い回しも学ぶことで、言葉に関する知見が広がります。「的を射る」というフレーズを適切に理解し、適切に使用することが大切です。

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