「味わわせる」と「味あわせる」、どっちが正しい日本語?

私達が日常生活の中で使っている言葉の中には、本来の意味や書き方使い方などを勘違いしている、間違って覚えてしまっているものがたくさんあります。

間違ったまま気づかないでいると、まわりの人に「常識のない人」「残念な人」などと思われてしまうかもしれません。子どもなら許されるかもしれませんが、たとえ若くても社会人になっていればもちろんのこと、中高年なればさらに恥ずかしい思いをすることになりかねません。

あなたも使っていませんか?

「私は大丈夫!」と思わず、今一度確認してみて下さい。これまで会話の中で当たり前に使ってきた言葉の中にも、勘違いが見つかるかもしれませんよ。

今回は、一見どちらの使い方でも問題ないように思える「味あわせる」と「味わわせる」について、日本語として正しく使えるのはどちらなのか?わかりやすく解説していきます

「味あわせる」と「味わわせる」という日本語ですが、本来の意味には少し違いがあり、勘違いして間違って使われやすい言葉です。

「味あわせる」と「味わわせる」、正しいのは?

「味あわせる」(あじあわせる)と「味わわせる」(あじわわせる)、文法上は、「味わわせる」が正しい形とされています。

なぜ文法上ではとことわるのか、少し掘り下げてみてみましょう。

現代日本語における「味わう」はワ行五段活用をする動詞です。

その活用形は、味わワない(否定形)、味わイます(連用形)、味わウとき(基本形)、味わエば(仮定形)、味わオえ(命令形)となります。「語幹」は変化しない部分で「味わ」となり、これに「活用語尾」が「ワ、イ、ウ、エ、オ」と組み合わさります。動詞に「~せる」を付ける場合でも、「味わわせる」という形で語幹が維持されます。

なので、「味わわせる」が文法的に正しい形です。

ただし、日本語では「わわ」という音の重複が発音しにくいため、「同音回避」の原理に基づいて、最初の「わ」の「w」が落ちて「あ」に変化し、「味あわせる」という形が生まれた可能性があります。

日常会話では「味あわせる」という形も広く使われています。インターネット調査によると、年齢層や性別による差はありますが、全体的に「味あわせる」が「味わわせる」よりも支持される傾向が見られます。

例えば、木村カエラの楽曲「Hungry like the CHICKEN」の歌詞にも、「味あわせる」という表現が使用されています:

【カシスより赤く染まって酔いしれる ブレンドされた時はぜいたくにゆっくり味あわせてね】

また、一部では「味合わせる」という表記も見受けられます。

この「合う」という漢字を使った書き方もありますが、これは文法的には正しくないとされています。「味あわせる」という表現は、本来変わらない語幹の「味わ」の部分を「あ」に変えてしまっているからです。この変形の背景には、「味わわせる」に見られる「わわ」という同音の連続を避ける意識が影響しています。事実、この連続を避ける傾向は「味あわせる」「味あわない」などの形で顕著に見られます。それに対して、「味あいます」「味あう」「味あえば」「味あおう」といった形はそれほど一般的ではないことが指摘されています。これは、「味わいます」「味わう」「味わえば」「味わおう」といった伝統形では「わわ」という同音の連続が生じていないためです。

同様の「わわ」という同音連続が見られる例として、「祝わない」「祝わせる」などがあります。しかし、これらの場合、「いあわない」「いあわせる」といった同音連続を避ける形は、一般的ではないようです。

類似の現象としては、「つむぐ」と「つぐむ」や、「はらだたしい」と「はらただしい」のように、音の入れ替わりが生じることがあります。「ふんいき」と「ふいんき」のような例もこれに含まれます。ただし、これらの音の入れ替わりが起こると、全く異なる単語になる場合と、単に誤った形になる場合の違いがあります。

「味わわせる」の意味

「味わわせる」という表現は、深い風味や興味深い体験を他人に感じさせることを指します。

この表現の具体的な使用例には、「彼らにも私が経験した苦痛を味わわせたい」「娘には同じような悲しみを味わわせたくない」「非常に満足感のある時間を味わわせてもらった」「息子には教育の問題で劣等感を味わわせたくはない」などがあります。

「味わわせる」とは、深く感じ取ることを意味する「味わう」という動詞に、他者に何かをさせることを示す助動詞「せる」が結合した形の連語です。連語とは、複数の単語が組み合わさって特定の機能を果たす言葉のことです。

「味わわせる」は肯定的な意味合いでも否定的な意味合いでも使われる言葉で、文脈によってその意味が大きく変わるため、使用する際には注意が必要です。例えば、「喜びを味わわせる」「楽しさを味わわせる」は肯定的な意味になりますが、「苦しみを味わわせる」「痛みを味わわせる」「地獄のような体験を味わわせる」は否定的な意味になります。

この言葉の類義語には、「受け入れて理解する」という意味の「享受する」、深い意味を感じ取ることを意味する「噛み締める」、直接経験することを意味する「体験する」などがあります。

「味あわせる」と「味わわせる」の違いまとめ

「味あわせる」と「味わわせる」の違いを簡単に説明すると、前者は後者の誤用とされることが多いです。

一般的に、「味あわせる」という表現は正式なものではありません。漢字の構成や読みが似ているため、「味わわせる」という言葉を誤って「味あわせる」と使ってしまう人が多いのが実情です。

「味わわせる」という言葉が発音しにくいと感じる人が多いため、代わりに「味あわせる」という表現を使う人が増えています。この傾向により、「味あわせる」が正しい日本語として認知される日が来るのも近いかもしれませんね。

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